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『破格のスピートとパワーを誇ったトップマイラー』


【2013年 マイラーズカップ】

「朝日杯の前、『バクシンオー産駒にマイルは長い』と言われましたし、スプリンターズS出走時も『距離短縮に対応できるか』と注目を集めました。それでも、馬が秘めている可能性は否定したくなかった。もしかしたら、血統の常識を覆せるかもしれないと感じていましたよ。思い出は尽きません。本当にたくさんのことを教えられましたね」
 長きに渡ってチームを牽引したグランプリボスについて、矢作芳人調教師はこう感慨深げに話す。
 芝の中距離に偏重して厚い層を誇る日本にあって、スプリント部門ではサクラバクシンオーの遺伝子は確実性が高く、断然の存在感を誇っている。母ロージーミスト(その父サンデーサイレンス)は、ダート1200mで1勝を挙げた。その半妹にアドマイヤキュート(3勝)がいるものの、同馬以外の産駒ではミステリーゲスト(3勝)が出世頭だった。
「ノーザンファーム空港での育成時代から一度もラインが崩れなかったですし、若駒離れした動きが評判。完成度が抜けていました。札幌競馬場に直接入厩させ、半月余りでのデビュー。びしっと追っても、まったくへこたれない。いつもは慎重な担当者(スーパーホーネットなども手がけた久保公二調教助手)も、『絶対能力が違いすぎる』って感心していましたね」
 2歳8月、芝1500mの新馬に臨み、札幌2歳Sに勝つオールアズワンらを完封する。デイリー杯2歳Sは7着に敗退。イレ込んだのが敗因だった。
「北海道より移動する際に輸送熱を発症。そのうえ、セーブしても動いちゃうくらいなので、最終追い切りが強すぎました。調教師のミスで、参考外」
 きちんと修正し直して臨んだ京王杯2歳S。みごとに重賞制覇を飾る。イメージを一新させる鋭い決め脚を発揮し、続く頂上決戦につなげた。朝日杯FSを制し、2歳チャンピオンに君臨する。
「直線は前が開くかだけが心配。能力を信じていましたからね。審議が長引き、降着も覚悟しました。でも、どんな結果が出ても、これが競馬だと割り切り、冷静でいられた。そのぶん、初めてG1を勝てたのに、思い切り泣けませんでしたよ」
 3歳春はスプリングS(4着)、ニュージーランドT(3着)と歩み、NHKマイルCではみごとに復権を果たす。中団の馬群でがっちり抑え、直線で一気に抜け出した。
「朝日杯よりはるかにプレッシャーを感じていました。負けてはいけない馬が年明けは連敗。その2戦は、ここを獲るためのステップだったわけですし、賭ける気持ちは強かったですね。正直に言えば、直前の飼い食いや馬がしぼんだ雰囲気から、調子自体は少し下がっていたと思います。マイナス6キロ止まりだったので、ほっとしましたよ。ぎりぎりにつくったのに、馬はよく耐えてくれました。紆余曲折があったぶんも、感激しました」
 世界へもアンテナを張り巡らせている矢作師らしく、ロイヤルアスコット開催のセントジェームズパレスSに挑む。ここでは歴史的な名馬であるフランケル(同レースを含めG1を10勝)の8着に敗れた。
「これだけの器となれば、種牡馬としての価値を高めていくのは使命。苦い経験となりましたが、日本競馬のためにもチャレンジを続けていかないと」
 海外遠征の疲れは大きく、3歳秋はスワンS(8着)、マイルCS(13着)と低迷したが、阪神Cではハナ差の2着に反撃する。フェブラリーS(12着)を挟んだ後、マイラーズC(13着)や京王杯SC(7着)を経て復調し、安田記念ではクビ差の2着に食い込んだ。
「なぜか、ずっと外枠ばかり引き当ててしまって。だから、前に馬を置けず、脚をためられないのがパターン化してしまった。すっかり人気を落としていても、安田記念は絶好の3番枠。これは勝ち負けになると確信しました」
 4歳秋にスワンSで久々の勝利。マイルCSもクビ差の2着する。香港マイルは12着と期待を裏切ったが、検疫厩舎に移動後、他馬の顔が見えずに淋しがり、飼い食いが落ちる誤算もあった。翌春はマイラーズCから始動。いきなり大外強襲を決めた。
「叩き良化タイプで、久々は走れない傾向にありましたが、リフレッシュ効果で中間は落ち着き払った態度。調教の反応も過去最高といえ、いよいよ完成の域に入ってきた実感がありましたよ。17番からのスタートでも、不運を跳ね返してしまった。前半でハイラップが刻まれ、しっかり折り合えた結果です」
 しかし、結局、これが最後の勝利となった。安田記念(10着)はハミをきつく噛んだうえ、直線で前が開かなかったもの。以前よりしたためていたスプリンターズS(7着)への出走も不発に終わる。しばらく気持ちが空回りし、スワンS(7着)、マイルCS(9着)と連敗を重ねた。
 左トモの軽い骨折を乗り越え、安田記念で2着に食い込んだ6歳シーズン。スプリンターズS(4着)、マイルCS(6着)でも力の衰えなど感じさせなかったが、香港マイル(3着)がラストラン。アロースタッドでスタリオン入りすることとなった。
「勝てなかったのは残念でしたが、引退が決まっていても、守りの調教ではなく、悔いのない仕上げを施せた。すがすがしい気分で締めくくれましたね。これからも競争は厳しいけれど、種牡馬としても成功を信じています。サクラバクシンオーの貴重な後継。能力が高かったからこそ、マイルまでこなせた。雄大な馬格を誇り、スピードとパワーもあり余るほど。前向きな気性や丈夫な脚元など、アピールできる点ばかりですから」
 


第44回 マイラーズカップ(GⅡ)
1着グランプリボス  牡5 57 浜中俊   矢作芳人
2着サンレイレーザー 牡4 56 和田竜二  高橋義忠
3着ダノンシャーク  牡5 56 Cデムーロ 大久保龍志

 単勝   930円
 枠連  1,500円
 馬連 12,880円
 馬単 22,510円

3連複  17,400円
3連単  137,900円




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