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『驚くべき成長力を誇った黄金の遺伝子』


【2011年 日本ダービー】

「この馬と出会え、夢のような3年半を過ごすことができましたよ。調教助手の時代に見識を広げてくれたステイゴールドが父。全兄のドリームジャーニー(有馬記念、宝塚記念、朝日杯FS)に続いて、いろいろなことを学びました。母オリエンタルアート(3勝)との縁もかけがえのないもの。その全兄にあたるシュペルノーヴァ(4勝)に跨った思い出もあって、愛着はひと際です。家族みたいな存在ですし、家族より一緒にいる時間が長かった。産駒で凱旋門賞に勝つという新たな夢もできましたしね。感謝するしかない」
 かけがえのない代表格に育ったオルフェーヴルについて、池江泰寿調教師はこう感慨深げに話す。
 生れ落ちたときより窮屈なところがない好スタイルを誇り、サンデーサラブレッドクラブの募集総額は6000万円という高額の設定。育成先のノーザンファーム空港では出走をあせらずに育てられたが、それでも頭角を現すのは早かった。2歳5月には栗東近郊のグリーンウッド・トレーニングヘ。1か月後に入厩した。
「父の良さがストレートに伝わっています。回転の速さで勝負するジャーニーとは対照的に、より柔軟でダイナミックなストライド。兄より生まれが遅いのに、ひと回り大きなサイズ。飼い葉をしっかり食べてくれますし、同時期の体質を比べても数段、丈夫でした。自信を持ってデビューさせました」
 ドリームジャーニーも第一歩を踏んだ8月の新潟(芝1600m)に初登場。上がり33秒4の末脚を駆使し、あっさり初勝利を収めた。ただし、思わぬ課題を露呈する一戦ともなる。
「普段は素直なのに、装鞍所で態度が豹変し、もうパニック。抑えられずに植え込みへ突っ込むほどでしたよ。レースで加速すると左に大きく切れ、入線後はラチにぶつかってジョッキーを振り落としてしまった。こんな面があるのかと、唖然とするばかりでした」
 ホエールキャプチャにクビ差及ばず、2着に泣いた芙蓉S。京王杯2歳S(10着)では出負けしてリズムを崩し、直線も内ラチに体を寄せて追えずにゴールした。
「押したことでかっとしたのがすべて。参考外と考えています。少し時間はかかりましたが、苦い経験があったからこそ、謙一くん(池添騎手)は懸命になって努力してくれました。厩舎スタッフだけでなく、放牧先のノーザンファームしがらきでも、この馬向きの調整を工夫。目指す大舞台に賭ける気持ちはひとつに結集しましたよ。それに応え、一戦ごと着実に進歩を示してくれたんです」
 シンザン記念(2着)のラスト3ハロンは33秒5の鋭さ。きさらぎ賞(3着)も流れに恵まれずに勝ち切れなかったものの、メンバー中で最速の末脚(33秒2)を爆発させている。大外を突き抜け、スプリングSで重賞を初制覇。クラシックの足音を察知するかのように、めきめき充実してきた。
 皐月賞時は4番人気にすぎなかったものの、3馬身差の快勝。ダービーではウインバリアシオンの追撃を抑え、あっさりと2冠を奪取した。
「体重を測定し、プラス4キロ。ちょうど思惑どおりの数字でしたので、まずひと安心しましたよ。道悪になり、切れが削がれるのではと案じていたのに、想像以上の強靭さも兼備。母父メジロマックイーンの血が騒ぎましたね。堂々たる勝利に感動しました。
 前日までは内目を通った先行馬が好走していましたので、リスクを覚悟してインを付くべきか悩んでいたのですが、レースが近付き、外が伸びるようになりましたからね。ジョッキーとは、いつもの競馬でいこうと話し合いました。
 位置取りは後ろでしたが、折り合ってリズム良く進む姿を見て、あとは馬場のいいところへ出せばいけると思いましたよ。ただ、4コーナーを回ってごちゃつき、ちょっと心配しましたね。でも、ジョッキーは慌てず、前が開くのを待っていた。馬も根性があり、いったん2着馬に先に出られたのに、あっり突き放してしまいました。さすがにステイゴールだと感心。鞍上の執念が実りましたよ。横で観戦していた親父(池江泰郎元調教師)も、拍手して喜んでくれました。『俺にとっては孫みたいな馬だ』と」
 順調に夏を越し、神戸新聞杯を2馬身半差で突破。そして、菊花賞でも無理なくポジションを上げ、直線で早めに先頭へ踊り出ると、危なげなく後続を振り切った。
「状態には自信を持っていました。ただ、3冠目に向け、なんとしても勝たなければならないとの思いが強まり、今後も味わえないだろう多大なプレッシャーが圧し掛かってくる。そのぶん、開放された心地良さは格別なものがありました」
 菊花賞まで無敗で歩んだシンボリルドルフやディープインパクトとは対照的に、2戦目以降は4連敗した過去があるとはいえ、スプリングSから破竹の5連勝。フィジカル面の変貌も見逃せない。皐月賞時は440キロだった馬体が、きっちり鍛え上げた菊花賞では466キロに増加していた。
「伝説の名馬たちと比べても、これだけの成長力を示す馬は例がありません。春当時のパドックでは見劣りするスタイルだったのに、首さしやトモに筋肉が備わり、ずいぶん大人っぽくなりました。理想的な位置で運べるようになったのは、操縦性が高まっただけでなく、背腰の甘さが解消したため。瞬時にゲートを出ていけるようになりましたよ」
 続く有馬記念では古馬を撃破。3歳にして日本を代表するチャンピオンに登り詰めた。阪神大賞典(2着)の逸走、天皇賞・春(11着)での挫折を跳ね除け、宝塚記念で復活の勝利を上げる。凱旋門賞(2着)は、ゴール前でインに切れ込んで失速したとはいっても、馬群をひと飲みした空前絶後の脚は、後世へも語り継がれるだろう。厳しいローテーションに加え、馬体をぶつけられる不利がありながら、ジャパンCでも2着に健闘した。
 5歳時は大阪杯(1着)より始動。鼻出血に配慮し、宝塚記念を回避する誤算もあったが、フォア賞の連覇、凱旋門賞での連続2着へと歩を進める。そして、引退レースの有馬記念は8馬身差のワンサイド勝ち。ベストパフォーマンスで有終の美を飾った。
「いい意味でも、悪い意味でも、想像を裏切ってきましたので、この馬らしいラストランとなりましたね。凱旋門賞にピークを持っていきましたので、やはり反動はあり、中間の調整は難しかった。状態は8分くらいと見ていて、どうかなという思いもあったのですが、あまりの強さにびっくり。ファンのオルフェーヴル・コールを聞き、私も心のなかでは一緒にコールしていましたよ」
 会心のゴールを決めても、たとえ敗れたとしても、希望がふくらむ一方だったオルフェーヴルの軌跡。いよいよ2歳となったファーストクロップたちがデビューを迎える。きっと産駒たちも、ドラマチックな走りを披露するに違いない。
 


第78回 東京優駿(GI)
1着オルフェーヴル   牡3 57 池添謙一 池江泰寿
2着ウインバリアシオン 牡3 57 安藤勝己 松永昌博
3着ベルシャザール   牡3 57 後藤浩輝 松田国英

 単勝  300円
 枠連  580円
 馬連 3,380円
 馬単 4,540円

3連複  22,950円
3連単  100,300円




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