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『奇跡の復活から驚くべき飛躍へ』


【2009年 スワンステークス】

 いまやトップレベルの地位を確固たるものにしている堀宣行厩舎に、初となるG1のタイトルをもたらしたのがキンシャサノキセキ。母ケルトシャーン(その父プレズントコロニー)はアメリカ生まれで不出走だが、半兄にグルームダンサー(リュパン賞など)がいて、重厚なヨーロッパの血が流れている。ただし、父はフジキセキ。中距離以上で断然の強さを誇るサンデーサイレンス系にあって、スピード色も濃かった。
 南半球産で生まれが半年遅れ(9月24日生まれ)。それでも、輸入されて日が浅いなか、2歳11月に美浦へ移動した。別の預託予定馬が不慮の事故で亡くなったために、急遽、入厩が決まった経緯があるのだが、当初から動きは非凡。1か月後には中山の新馬(芝1200m)に登場し、いきなり初勝利を収めた。続くジュニアCも豪快に差し切る。  ただし、激しい気性ゆえに折り合いを欠きがち。アーリントンC(6着)、マーガレットS(4着)と期待を裏切ってしまう。NHKマイルCでは3着に反撃。確かな実力を示した。
 3歳秋に桂川S、4歳になって谷川岳S、キャピタルSと勝利したものの、重賞ではあと一歩の走りが続いた。早くから短い舞台にシフトしていたら、容易に出世できたとも思われるが、力任せに急ぐことばかりを教えれば、操縦が利かないまま、精神的に燃え尽きてしまうのがパターン。先々を見据えた同ステーブルらしい取り組みが、その後に生きてくる。
 第一次の黄金期を迎えたのが5歳時。右前脚を挫跖するアクシデントがあり、直前まで出否を悩んだ高松宮記念だったが、鉄橋を渡して蹄底を保護するタイプの特殊鉄に履き替えて参戦に踏み切った。いったん先頭に立ち、クビ差の2着に健闘する。そして、しっかり態勢を整え直したうえ、函館スプリントSに臨むと、晴れて重賞ウイナーの仲間入りを果たした。
 続くキーンランドCは3着に敗れたものの、位置取りがすべて。メンバー中で最速となる33秒7の上りを駆使する。スプリンターズSを2着し、翌シーズンに備えた。ところが、連戦の疲労が抜けず、しばらくはスランプ。すぐに気持ちがオンに切り替わり、促さなくても動きすぎるくらいに動くタイプだけに、十分にリフレッシュ期間を取っていても、放牧先でオーバーワークになりがちなのだ。
 6歳秋になり、完成の域に達した。スプリンターズS(12着)では身のこなしに硬さが目立ったのだが、陣営は懸命にケアを施す。鮮やかに復活を遂げたのがスワンSだった。
 鞍上に抜擢されたクリストフ・スミヨン騎手は好スタートを決めると、前に馬を置いて行きたがるのをなだめ、直線は前ががらりと開いたインを突く。もたれる面に配慮し、このレースでは右側だけブリンカーを装着。まっすぐ栄光のゴールへと伸び、熾烈な追い比べを制した。
「我が強いところがウイークポイント。テンションが上がるのを心配していたのに、下見でも落ち着いていて、成長を実感しました。気持ちと体のバランスが、ようやく釣り合ってきたのでしょう。調教のダメージも残らなくなり、ぐっとたくましくなりました」(堀宣行調教師)
 さらに阪神C、オーシャンS、そして、高松宮記念と破竹の4連勝で突き進んでいく。晴れて頂点を極めた以降も、状態は高いレベルで安定。スプリンターズS(2着)、マイルCS(距離延長に抑えが利かずに13着)、阪神C(1着)、オーシャンS(2着)と歩み、高松宮記念を連覇した。
 8歳にして「蝶のように舞い、蜂のように刺す」(競走馬名はモハメド・アリがコンゴ民主共和国のキンシャサでジョージ・フォアマンを破った名勝負から)かのようなベストパフォーマンス。生涯で最高の着差(1馬身1/4)を付け、ラストランをハッピーエンドで締めくくった。その競走成績を振り返れば、長編小説を読破したくらいの感動を味わえる。
 種牡馬としての人気も絶大である。シュウジ(小倉2歳S、阪神C)、カシアス(函館2歳S)がタイトルを奪取。父のレベルに近づく大物の登場が待ち遠しくてならない。
 


第52回 スワンステークス(GⅡ)
1着キンシャサノキセキ 牡6 57 Cスミヨン 堀宣行
2着アーリーロブスト  牡3 55 池添謙一  本田優
3着マルカフェニックス 牡5 58 福永祐一  松永昌博

 単勝  860円
 枠連 31,610円
 馬連 42,790円
 馬単 74,990円

3連複 154,690円
3連単 881,590円




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