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『稀代の名馬を支えた心優しき悪漢』


【2007年 ダービー卿チャレンジトロフィー

「2歳時から、心身ともにしっかりしていましたよ。体調の変動も少ない。その反面、キャリアを積んでも目に見えてがらっと変わることがなく、つかみにくいところがありましたね」
 と、池江泰寿調教師が振り返るのはピカレスクコートのこと。
 母フジノタカコマチ(その父コリムスキー)は3勝をマーク。同馬の全姉に阪神3歳牝馬など重賞を4勝し、秋花賞でも2着したヤマカツスズランがいる。「悪漢のコート」との命名は、配されたジェイドロバリー(翡翠泥棒の意)より連想されたものだった。
 デビューしたのは04年9月の阪神(芝1600m)。出遅れながらも2番手に押し上げ、コンマ1秒差の3着でゴールした。続く京都の芝1600mを楽々と逃げ切る。
 ダートでの良績が目立つ父だけに、3戦目にはもちの木賞を選択したものの、13着に大敗してしまう。バランスを崩し、脚元を捻ったのが敗因だった。しかし、久々となったさわらび賞をあっさり突破。勝ち切れないまでも、ニュージーランドT(4着)など、重賞に臨んでも大きく崩れなかった。
 4歳になり、ようやく太宰府特別を勝ち上がったとはいえ、準オープンでは足踏み。降級緒戦の玄海特別を2着したところで、フランスへと旅立つこととなる。凱旋門賞に出走するディープインパクトの帯同馬を務めたのだ。輸送中や現地で、主役の精神的な不安を軽減するのが役目。環境の変化にも動じない性格と、タフな体質を見込まれての抜擢である。
「ディープはまったく問題ありませんでしたが、シャンティ調教場の馬場は、ピカレスクコートにとって固すぎます。
7、8分くらいの状態に持っていくのが精一杯。捻挫した過去に配慮し、できるだけ球節に負荷をかけないよう、ずっと坂路やウッドで調教してきましたから。それなのに、ダニエルウィルデンシュタイン賞(G2、芝1600m)で2着したんです。驚きましたよ。レースを使えたのは副産物のようなもの。日本馬のレベルがいかに上がったのか、はっきり裏付ける出来事でした」
 帰国すると、いきなり初霜特別を逃げ切る。しかし、自ら先へ先へと行ってしまい、鞍上がサイドブレーキをかけながら走っているような状況だった。優等生ゆえに実直すぎて、なかなか融通が利かないのだ。
「その後の2戦は直線で失速。有効な手段が見出せず、悩んでいましたね。それなのに、道頓堀Sでは、うまく控えることができた。ロスなくインで脚がたまり、イメージを一新する差し切り。ただ、偶然なのかとも思え、ダービー卿CTも半信半疑で見ていましたよ」
 中団で折り合いに専念し、手応え十分に直線へ。鮮やかに馬群を割り、後続をコンマ3秒も突き放した。23戦目にして重賞ウイナーに。連勝したのも初めてならば、ここまで11人のジョッキーが跨っているのに、2勝を挙げたのは秋山真一郎騎手のみである。リラックスさせることに成功した殊勲のジョッキーは、「いいタイミングで乗せてもらっただけ。馬が強かった」とクールに話した。
 だが、これで闘志が燃え尽きたのか、8戦連続の二桁着順。ラストランとなった小倉日経オープンで2着して意地を見せた後、ノーザンホースパークで乗馬となった。
 稀代の名馬を影で支えたのみならず、渾身の一撃でスポットライトを浴びたピカレスクコート。競走向きの性格ではなかったけれど、愛すべき好漢だった。
 


第39回 ダービー卿チャレンジトロフィーGⅢ
1着ピカレスクコート  牡5 55 秋山真一郎 池江泰寿
2着コイウタ      牝4 53 松岡正海  奥平雅士
3着マイネルハーティー 牡5 54 吉田隼人  中村均

 単勝  1,570円
 枠連  1,940円
 馬連 12,530円
 馬単 20,320円

3連複  109,320円
3連単  410,570円




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