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『深く向き合ってキャッチした貴重なタイトル』


【2016年 NHKマイルカップ】

 開業4年目の2001年以降、安定して20勝以上をマークし、高い評価が定着している田村康仁調教師。21年目のシーズンを迎えても、馬づくりへの意欲はますます燃え盛っている。
「獣医や装蹄師など、かかわる人が何重もチェックするのはもちろん、大切な馬たちとは深く向き合いたい。だから、分業のかたちを採らず、担当者が付きっ切りで些細な前兆も見逃さない体制を敷いています。いつか大きなチャンスが巡ってくると信じていましたし、それを逃さないためにも、できる限りの努力をしていかないと」
 これまで7頭の重賞ウイナーを送り出しているが、初となるGⅠの栄光をもたらしたのがメジャーエンブレムだった。敏腕トレーナーは、こう若駒時代を振り返る。
「硬い歩様にもかかわらず、母のキャッチータイトル(その父オペラハウス)はタフにがんばりました。その仔がまた戻ってくるだけでうれしかったうえ、1歳に出会った当初でも筋肉や骨量が豊富。それでいて武骨な感じがなく、きれいなラインです。まっすぐ育ち、ノーザンファーム空港では『桁違いに動く』との評価を受けていましたからね。胸のときめきは高まる一方でした」
 5勝をマークした母だけでなく、全兄にあたるメジャープレゼンス(3勝)、メジャーステップ(3勝)も田村厩舎で走った。配された父は、安定してサイアーランキングの上位を賑わすダイワメジャー。同馬以外にも、カレンブラックヒル(NHKマイルC)、コパノリチャード(高松宮記念)、レーヌミノル(桜花賞)をはじめ、多くのタイトルホルダーが登場している。
「2歳の4月末には美浦へ。改めて優秀な身体能力に目を丸くしましたよ。重くて走りづらい坂路を馬なりで加速。息も乱れないんです。この血統らしく主張が激しい部分を秘めているはずでも、調教で反抗して止まったりしたプレゼンスや、曳き運動で暴れないように跨ってパドックへと向ったステップのデビュー当時とは違い、性格だって大人びています。母や兄たちは長めの距離をこなせますので、オークス向きなのかとも想像し、初戦は1800mを選択したとはいえ、走るのに前向きですしね。幅広い条件に対応できるセンスの良さを見込んでいました」
 6月の東京でターフに初登場。好位からノーステッキで抜け出した。
「クリストフ(ルメール騎手)は騎座で抑え、ゴールまで遊ばせないように配慮。将来につながる貴重な経験を積めましたよ。以降はNF天栄とのスムーズな連携のおかけで、この馬向きの『ルーティン』が確立。一戦ごとにリフレッシュを挟みながら、無理のないローテーションを組めました」
 アスター賞も2馬身半差の完勝。アルテミスSは2着に敗れたものの、大外枠から先頭に押し出される苦しい展開のなか、わずかクビ差に粘った。
「思ったより行きたがったのが誤算。阪神JFに向けては、我慢を教えることに心を砕きましたね。追い切りのパターンも替え、坂路で乗って落ち着かせた後、ウッドコースへ入るように。賢い馬だけに、こちらの意図をしっかり理解してくれました。前走を踏まえ、ジョッキーやスタッフも留意。ふわっと返し馬ができ、輪乗りでもリラックスしていましたよ」
 絶好のスタートを決めた2歳女王決定戦。競りかけられても2番手でリズムを崩さずに追走した。余力たっぷりに直線に向き、楽々と2馬身差を付ける。
 クイーンCは自ら主導権を握り、危なげない逃げ切り。驚異のレースレコード(1分32秒5)を叩き出し、後続に5馬身の差を広げた。
 ところが、桜花賞(4着)で単勝1・5倍の断然人気を裏切ってしまう。早めに進出して押し切るかたちを想定していたが、包まれて動きづらいポジション。リズムに乗れず、決め手比べに屈した。
「あれで十分と見込んでいたとはいえ、関西への輸送があっても、プラス4キロの体重。結果か出ているときの体に絞りました。NHKマイルへは、完璧なコンディションで臨めたと思います。今度こそ負けられない。真っ向勝負のかたちに持ち込め、あのハイラップでも止まらない自信がありましたね。すべてがバランス良くトップレベルにあり、完成度は頭2つぶんくらいリードしている実感がありましたから。責任を果たせ、ほっとしましたよ。馴染みの血で念願がかない、この上ない喜びを味わえました」
 ハナに立ってリラックスでき、直線半ばに差しかかると、力強い脚色で引き離す。末脚自慢の牡馬たちが迫ってきても、最後まで寄せ付けなかった。まったく危なげないパフォーマンス。堂々と3歳マイルチャンピオンに君臨する。
 以降はトモの筋肉痛や蹄のトラブルに見舞われ、結局、現役続行を断念。わずか7戦のみで繁殖入りすることとなった。早すぎるリタイアだっただけに、田村調教師の無念さは想像に難くない。それでも、また次の世代へと夢をつなげられるのが競馬の醍醐味。母仔3代にわたる壮大なドラマが展開していくに違いない。
 


第21回 NHKマイルカップGⅠ
1着メジャーエンブレム 牝3 55 Cルメール 田村康仁
2着ロードクエスト   牡3 57 池添謙一  小島茂之
3着レインボーライン  牡3 57 福永祐一  浅見秀一

 単勝  230円
 枠連  460円
 馬連  940円
 馬単 1,470円

3連複  11,190円
3連単  33,030円




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