平日コンテンツ

『さらなる絶景を栄光の先に求めて』


【2010年 ヴィクトリアマイル】

 いざレースとなれば闘争心を前面に出し、爆発的な決め手を駆使したブエナビスタ。うさぎのように長い耳が特徴であり、感受性豊かにぴくぴく動かせる。ただし、厩のなかでは神経質な面など見せず、常に穏やかな表情を浮かべていた。一流馬ならではの気品。その周囲だけオーラに包まれているようだった。
 阪神3歳牝馬S(当時)でG1勝ちした母ビワハイジ(その父カーリアン)に、ダービーやジャパンCを制したスペシャルウィークが配されて誕生したブエナビスタ。同馬の兄姉にアドマイヤジャパン(京成杯、菊花賞2着)、アドマイヤオーラ(弥生賞など重賞を3勝)、弟妹にもトーセンレーヴ(エプソムC)、ジョワドヴィーヴル(阪神JF)、サングレアル(フローラS)がいる豪華な一族だ。サンデーサラブレッドクラブにて総額4000万円で募集。ノーザンファーム早来での育成当時より、評判の美少女だった。
 2歳10月、京都の芝1800mでデビュー。3着に終わったとはいえ、ラスト3ハロン(33秒5)はレースの上がりをコンマ7秒も凌ぐ圧倒的なものだった。集ったメンバーも強力。1着がアンライバルド(皐月賞)、2着にリーチザクラウン(ダービーを2着)、4着はスリーロールス(菊花賞)である。のんびりした気持ちが切り替わり、続くマイルの未勝利を3馬身差で快勝。抽選の壁を突破して阪神JFに臨むと、大外を突き抜けて2馬身半の差を付ける。あっさりと2歳女王に輝いた。
 チューリップ賞での危なげない勝利から、単勝1・2倍に推された桜花賞。ここでも人気にふさわしいパフォーマンスを披露する。スタートでは1馬身ほど遅れたが、安藤勝己ジョッキーは慌てることなく、後方に待機させる。ラスト33秒3は、次位のレッドディザイア(半馬身差の2着)をコンマ4秒も上回る鋭さ。直線へ向くと進路をふさがれるシーンもあったが、追い出しを遅らせて外へと導く。そこから猛然とスパートし、半馬身の先着を果たした。
 最後の最後まで苦しみながら、オークスもレッドディザイアを交わした。33秒6の末脚は圧巻。ハナ差の辛勝ではあっても、強さが際立つ2冠達成といえた。
「当時でも先行させることはできたかもしれないが、あの馬の良さを生かすのにどうしたらいいかと考えれば、どうしても脚をためる戦法にたどり着く。負けて批判させるのは仕方のないこと。でも、いまでも間違った乗り方をしたとは思っていない」(安藤勝己騎手)
 世代で屈指の能力を誇りながら、3歳の後半は札幌記念(クビ差の2着)、秋華賞(ハナ差の2位入線するも3着に降着)、エリザベス女王杯(ラスト3ハロン32秒9で猛追しながら3着)と、勝利の女神はなかなか微笑まなかった。ここで鞍上はチェンジされることに。だが、横山典弘騎手に導かれ、一転した積極策を取った有馬記念でも、ハイペースに泣いて2着に止まった。
 4歳になって一段と充実し、京都記念に優勝。ドバイシーマクラシックでも2着に健闘する。久々にG1の勲章を手にしたのが、遠征直後のヴィクトリアマイルだった。
 2ハロン目から10秒6、11秒0、11秒7が刻まれた前傾ラップ。横山ジョッキーは慌てずに構える。直線で大外へ導くと、鮮やかな進撃が締まった。2着のヒカルアマランサスが内で粘るなか、ゴール寸前にぐいと出て、貫録勝ちを収める。
「馬体が離れていたので、差し切れて安堵したね。返し馬では硬さがあり、案の定、ゲートの出はちょっと鈍かった。帰国後のレースだけに、万全の状態ではなかったように思う。勝負どころでの手応えも怪しかったけど、それで勝つのがすごいところ。底力が違った」(横山典弘騎手)
 宝塚記念はあと一歩の2着。クリストフ・スミヨン騎手をパートナーに迎え、天皇賞・秋を快勝してトップの座を揺るぎないものにしたものの、ジャパンCは1位でのゴールが覆り、2着への降着処分。有馬記念も長い写真判定の結果、2着に敗れてしまう。負けてなお強しの内容を示している一方、悲運につきまとわれた競走生活でもあった。
 5歳時はドバイワールドC(8着)、ヴィクトリアマイル(2着)宝塚記念(2着)、天皇賞・秋(4着)と歩む。歴史的な名牝にとってハイライトと位置付けられるのが5歳時のジャパンC制覇。レース後、共同会見に臨んだ松田博資調教師は、わき上がる様々な感情を抑え切れず、しばらく言葉を詰まらせた。馬づくりの達人の目に浮かんだ大粒の涙が忘れられない。
 ゴールの先に広がる絶景(スペイン語でブエナビスタ)を追い求め、懸命に走り続けた同馬。有馬記念(7着)でラストランを迎え、無事に繁殖入りした。
 初年度の流産を経て、コロナシオン(現1勝)、ソシアルクラブ(現1勝)が誕生。現2歳のタンタラス(牝、父キングカメハメハ)にも注目が集まる。母に新たな栄光をプレゼントする大物の登場を待ちたい。
 


第5回 ヴィクトリアマイルGⅠ
1着ブエナビスタ    牝4 55 横山典弘 松田博資
2着ヒカルアマランサス 牝4 55 内田博幸 池江泰郎
3着ニシノブルームーン 牝6 55 北村宏司 鈴木伸尋

 単勝  150円
 枠連 1,600円
 馬連 2,490円
 馬単 2,780円

3連複  29,700円
3連単  85,770円




Copyright © 2006 WORLD, Inc All Rights Reserved.
このサイトに掲載の記事・写真・映像などの無断複製、転載を禁じます。すべての著作権はWorldに帰属します。

前のページへ戻る

PAGE TOP