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『知将が愛した最後のタイトルホルダー』


【2018年 福島牝馬ステークス】

 本年2月に引退を迎えるまで、管理馬の能力を最大限に引き出そうと意欲を燃やし続けた中村均調教師。歴史の知識も豊富なホースマンだったが、強大な兵力で天下を取った戦国武将ではなく、真田幸村など、巧みな戦術で敵を倒すタイプが好みである。血統的な価値よりも、馬そのものの資質や特徴を重視し、調整方法やレース選択、戦法に工夫をこらすことによって、JRA通算722勝もの勝ち鞍を積み重ねてきた。オークス(トウカイローマン)、天皇賞・春(ビートブラック)をはじめ、重賞を31勝しているが、最後に手がけたタイトルホルダーがキンショーユキヒメである。
 クラシック2冠や春秋の天皇賞を制したメイショウサムソンの産駒。母のアップルティー(その父サンデーサイレンス)は未勝利だが、祖母アドマイス(北米G1・オークトリーターフChS)に連なるファミリーであり、同馬の叔父母にブラックカフェ(6勝)、マドモアゼルドパリ(6勝、マキシマムドパリの母)らがいる。HBAオータムセール(1歳)にて220万円で購買された。
「優秀な母系に加え、渋太さがあって好みの父。どこから見ても、馬体は整っていた。ところが、すんなり落札。社台ファームの生産なのに、クラブやセレクトセールにピックアップされず、なにか欠点があるのではと、みな深読みしたんだろう。新冠育成公社で乗り込まれていた当時より、動きもすばらしかったよ」
 と、中村師は幸運な出会いを振り返る。
 2歳7月の入厩すると、調整はスムーズに進行。小倉の芝1200mで新馬勝ちを果たし、小倉2歳S(8着)へも駒を進めた。
「短めの距離から始動させたのは、メンバーが手薄との情報に後押しされてのこと。もともと適性を感じていた1800m以上にシフトしたら、2勝目(デイジー賞)までの6戦も掲示板を外していない。ただし、勝ったマカヒキをマークしても一気に離された若駒S(4着)が物語るように、以前はエンジンのかかりが遅くてね」
 白百合S(9着)や、秋華賞(11着)でトップレベルの壁に跳ね返されたとはいえ、8戦した1000万クラスは7走が4着以内だった。右肩上がりに調子を上げ、小牧特別を快勝。初の2400mとなった烏丸S(7着)も堅実な内容でまとめた。鮮やかに突き抜けたシンガポールTに続き、ムーンライトHもきっちり差し切りを決める。
「じっくり力を付け、順調にオープン入り。切れを増すのに、しばらく末脚を伸ばす練習を積む必要があったけれど、あと一歩で届かなかったが、格上挑戦したマーメイドS(4着)でも最速の上がり(3ハロン34秒3)を使っていたからね。まだまだ伸びる可能性を感じていた」
 府中牝馬S(6着)、JBCレディースクラシック(12着)、愛知杯(10着)、中山牝馬S(7着)と、流れに沿ったレースができなかったものの、知将は根気強く反撃のときを待っていた。そして、ついに福島牝馬Sで念願が叶う。
「先行有利な福島だからこそ、逆の発想がはまりやすい。ラストの瞬発力に賭けてほしいって、ジョッキー(秋山真一郎騎手)には指示したんだ。出遅れてしまい、4コーナーでは外へ振られる誤算もあったけど、狙いがずばり。痛快な気分だったよ。それにしても、よく交わしてくれた。ここまで出世できたのはタフな心身があってこそ。牝ながら500キロ超の馬格に恵まれ、カリカリしない素直な性格。飼い葉をよく食べ、トラブルとは無縁だけに、思い通りに鍛えられる」
 以降の6戦は不発に終わったとはいえ、緻密な戦略によって繁殖としての価値を高めるのに成功。トレーナーにとってもラストランとなったエンプレス杯(9着)まで深い愛情を注がれ、幸せな競走生活を送った。きっと良き母となり、入念に吹き込まれた熱き思いを未来へとつなげていくに違いない。
 


第15回福島牝馬ステークス(GⅢ)
1着キンショーユキヒメ 牝5 54 秋山真一郎 中村均
2着カワキタエンカ   牝4 54 池添謙一  浜田多実雄
3着デンコウアンジュ  牝5 54 名正義   荒川義之

 単勝 1,630円
 枠連 2,950円
 馬連 3,070円
 馬単 7,890円

3連複  7,700円
3連単  63,340円




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