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『麦わら帽子に詰まった初夏の思い出』


【2012年 ユニコーンステークス】

 ダートの王者となったカネヒキリ、スプリント部門へキンシャサノキセキ、マイルにもコイウタ、エイジアンウインズ、ダノンシャンティ、サダムパテック、そして、クラシックウイナーのイスラボニータなど、長年に渡って多彩なトップホースを送り出したフジキセキ。忘れえぬ一頭にストローハットもいる。
母ウォートルベリー(その父はG1・セントジェイムズパレスSなどに勝ったスターボロー)は、ジャンロマネ賞(芝2000mのG2)やミネルヴ賞(芝2500mのG3)など、フランスで7勝を挙げた名牝である。同馬の叔父母には、アンドレバボワン賞(G3)の覇者で仏12勝のヴァレンティノや、サンタラリ賞(G1)に勝ったベルエセレブル、スカンディナヴィア2・3歳牡馬チャンピオンおよびスカンディナヴィア芝牡馬チャンピオンに輝いたアペルオメトルといった一流どころがずらり。セレクトセール(当歳)での購買価格は5600万円だった。
 この母系だけに、社台ファームでの育成時よりクラシックディスタンスでの活躍が見込まれていたが、思いのほか仕上がりは早かった。2歳6月、美浦トレセンへ。ゲート試験を1回でパスすると、15-15を含めて10本以上のタイムをマークするとともに、手前の替え方なども丁寧に教え込んだうえ、函館競馬場へ移動した。
 札幌の芝1800m(3着)でデビュー。2度の輸送を経て想像以上にテンションが上がってしまい、パドックでは放馬するアクシデントもあったが、ゴールに向かって12秒1、11秒6、11秒2という決め手比べのなか、勝ち馬のベストディールをコンマ3秒凌ぐ34秒5の上りを駆使する。深い洋芝でこれだけの瞬発力を示す2歳は滅多にいない。
   山元トレセンで精神面のリフレッシュを図り、10月の東京、芝1800mを快勝。ラスト3ハロン(34秒1)はレースの上りをコンマ7秒も上回る鋭さだった。ただし、ゲートで立ち上がったことで、発走調教再審査の制裁を受けてしまう。
 3か月の間隔を開け、年明けに東京(芝2000m)で再スタート。伸び切れずに3着に終わる。スタートの不安に加え、道中で力む傾向も強くなり、共同通信杯(4着)、スプリングS(8着)とリズムに乗れなかった。
 主戦を務め、たびたび美浦にも駆け付けて稽古に跨っていた福永祐一騎手は、ダート適性の高さを感じ取っていた。進言を受け、中山のダート1800mへ向かったところ、楽々と抜け出し、3馬身差を付けてゴール。ユニコーンSに照準を定め、大切に磨きがかけられた。
 1馬身ほど出遅れたものの、福永騎手にあせりはなかった。後方のインで折り合いに専念。コーナーで無理なくポジションを上げ、直線は外へ持ち出す。ゴーサインを受けると瞬時に反応。先行集団をひと飲みし、直線で猛追したオースミイチバン(コンマ3秒差の2着)らにも影を踏ませなかった。
 期待どおりの末脚に、ジョッキーはこう笑顔を爆発させた。
「余力はたっぷり残っていましたし、底知れない可能性を感じます。あとは気性面が成長してくれれば」
 直線で不利があり、ジャパンダートタービーは7着。昨秋の武蔵野S(5着)ではスタート直後に他馬と接触し、行きたがった結果である。ギャラクシーS(5着)にしても、前が止まらない展開に泣いたもの。明らかに粗削りな状況であり、陣営も長期的な未来図を描いて課題の解消に努めていた。
 ところが、根岸Sで競走を中止。レース後の獣医師による診断では重大な故障を発症していないと判断されたものの、美浦への輸送を経て詳細な検査をしたところ、右トモの腸骨に数か所の亀裂が発見された。残念ながら予後不良に。あまりに早すぎる別れだった。
 寒風に吹き飛ばされたストローハット。それでも、ユニコーンSでの圧倒的なパフォーマンスは、多くの人々に深い感動を与えた。初夏の到来とともに、あの勇姿が鮮明に蘇ってくる。


『帽子』西条八十

 母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?
 ええ、夏、碓氷から霧積へゆくみちで、
 谷底へ落としたあの麦わら帽子ですよ。
 母さん、あれは好きな帽子でしたよ、
 僕はあのときずいぶんくやしかった、
 だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。

 


第17回ユニコーンステークス(GⅢ)
1着ストローハット   牡3 56 福永祐一 堀宣行
2着オースミイチバン  牡3 57 川島信二 荒川義之
3着タイセイシュバリエ 牡3 56 武 豊  宮本博

 単勝  320円
 枠連  510円
 馬連  830円
 馬単 1,410円

3連複   6,280円
3連単  21,210円




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